齋藤一さんの工房へ

作家・窯元探訪

齋藤一さんに初めてお会いしたのは、昨秋の陶ism。それ以来、見たことがないような絵画的な美しさに夢中になり、お訪ねするのを楽しみにしていました。

陶ismの時には、元町のパン屋さんに通ったという齋藤さんに、ぜひとも西荻窪の美味しいパンをお土産にしたかったのですが、早朝の出発だったので今回は断念しました。ふたり分のお昼ごはんのパンを名古屋で調達し、瀬戸へ向かいました。

工房は、元 製陶会社の作業場を、若手作家に貸し出しているところで、瀬戸の住宅街の中にありました。他の作り手も別室で制作をしています。

ゆっくりお茶を飲みながら、制作について、様々なお話を伺いました。

学生時代は,粉引や飴釉のうつわを作っていたのだとか。そして、李朝磁器などの古いものもお好きなのだそうです。

ただ、それぞれの時代には、その時代の人たちが、そのものを作る意味があったのだと考えるようになり、

齋藤さんは、自分が本当に作りたいもののあり方を考えるようになったのだそうです。

つまり、自分であることの必然性です。

作品を産地や技法でカテゴライズするのではなく、自分のオリジナルとして作りたい。ただし、オブジェではなく、実用性のある『うつわ』であることにこだわって作っていきたいと仰っています。

気さくにお話ししてくださる中にも、明確な思いを感じることができ、この旅の大きな収穫になりました。うつわは道具であり、求められるのは用の美なのですが、斎藤さんの作品に感じる芸術性は、用の美を超えて、暮らしに彩りを与えてくれることでしょう。